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日本で自動運転はなぜ進まない? ロボトラックが埋めにいく物流危機の「欠けたピース」

後付け×拠点間×連携で社会実装を急ぐ、自動運転トラックの現実解

連載
このスタートアップに聞きたい

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 日本の物流が限界に近づいている。トラックドライバーの不足、長時間労働、輸送力の低下──いわゆる「2024年問題」は、その象徴にすぎない。荷物が届かなくなる未来は、もはや仮定の話ではなく、現実の延長線上にある。

 この構造的な課題を「自動運転」で解消しようとしているのが、株式会社ロボトラックだ。同社は、過去に東京―名古屋間での無人走行を含む自動運転の実証に携わった経験を土台に、現在は日本での社会実装に向けた準備を進めている。2026年度には許認可取得に向けたセッションを予定し、2027年度には公道での無人実証に踏み出す計画だ。

 ロボトラックが目指しているのは、すべての道路を無人化することでも、トラックメーカーになることでもない。日本の物流エコシステムの中で欠けていた「自動運転」というひとつのピースを、最も現実的な形で埋めることだ。

 その事業戦略と展望について、同社代表取締役CEO/共同創業者の羽賀雄介氏に聞いた。

なぜ「空」ではなく「トラック」だったのか

 羽賀氏のキャリアをたどると、一見すると自動運転トラックとは距離があるように見える。三菱商事で約10年間、事業開発の最前線に立ち、その後は「空飛ぶクルマ」の社会実装に挑むスタートアップでCOOを務めた。未来志向の技術に賭けてきた人物だ。

 しかし、その経験こそが、ロボトラック創業の判断に直結している。

 「空飛ぶクルマのときは、“何を置き換えるのか”が日本ではまだはっきりしなかったんです」

 渋滞解消や移動革命といったコンセプトは魅力的だが、日本では既存の交通インフラが比較的整っており、外国ほど切実なニーズがあるとは言い切れなかった。社会に受け入れられるまでの距離は、どうしても長くなる。

 一方で、物流は違った。

 「『2024年問題』と言われるように、物流はペインが深すぎる。しかも、その痛みは業界全体で共有されています」

 ドライバー不足は慢性化し、労働時間規制も強化される。「人が足りない」という問題は、努力や工夫ではもはや埋められない段階に入っている。だからこそ、自動運転という“置き換え”が、理屈ではなく必要性として受け入れられる土壌があった。

 もうひとつ、羽賀氏の判断を後押ししたのが、技術的な確信だ。

 ロボトラックの技術チームは、過去にトラックの完全無人運転を世界で初めて実現した創業者が率いており、ゼロからの挑戦ではない。

 「技術的には、無人運転が“ほぼできる”確信がある。だからこそ、次の勝負は技術ではなく社会実装だと思えました」

 未知のルールに手探りで挑むのではなく、ゴールまでの道筋が見えている。そのぶん、行政対応やビジネスモデル、ステークホルダー調整といった“現実の難所”に集中できる。

 空を飛ぶという未踏の領域を経験したからこそ、「今、絶対に直さなければならない場所」が見える。羽賀氏が選んだのは、夢を語り続けることではなく、日本の物流という大動脈に、確実に効くバイパスを通すことだった。

ロボトラックは何を“やらない”会社なのか―― 物流エコシステムに足りなかったピース

 「我々は、トラックを作るつもりもなければ、物流会社を作るつもりもありません」

 羽賀氏は、自社の立ち位置をそう端的に語る。自動運転トラックのスタートアップでありながら、ロボトラックは製造業でも運送業でもない。その前提は、創業当初から明確だったという。

 羽賀氏が見ているのは、物流業界そのものの構造だ。物流は、卸や小売、倉庫事業者、運送会社など、多様な業種が絡み合って成り立つ極めて複雑なエコシステムである。そこにはすでに多くの企業と人が関わり、大規模な事業体も存在している。そうした中で、新たなプレイヤーが「トラックを作る」「物流事業を始める」と名乗れば、既存のメーカーや物流会社にとっては競合、すなわち“敵”になってしまう。

 「トラックを作る人たちもいるし、物流会社も、すでに多くの人が従事している世界です。そこに同じことをやりに行くのは違うと思いました」

 では、日本の物流が直面する危機の中で、本当に足りていないものは何か。羽賀氏の答えは明快だ。

 「今、この物流エコシステムの中で欠けているピースは、『自動運転システムそのもの』です」

 トラックを作る企業も、物流を運営する企業もそろっている。一方で、自動運転という機能だけが、実装されてこなかった。ロボトラックは、その空白を担う存在として自らを位置づけた。

 重要なのは、既存の業界プレイヤーを置き換えないことだという。物流を支えてきたプレーヤーをリスペクトし、そのうえで、エコシステムの中で足りない機能を見極め、既存のプレイヤーと組む。ロボトラックの事業は、その思想を出発点として設計されている。

【「全部やらない」から、実装できる(次ページ)】

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