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西日本へのネットワーク拡張も進行中、「本社からの注目度も高い」 APAC社長・水谷氏

「2026年は海外進出する日本企業のパートナーに」 Coltが最新の取り組みを説明

2025年12月10日 12時45分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 「『デジタルインフラの変化』はグローバルな動きだが、特に日本では現在、それが顕著に現れていると感じる。Coltの本社(英国)側でも、いま一番多く話題に上っているのは、日本市場についての話題だ」(Colt 水谷安孝氏)

 法人向けのネットワーク/音声/データセンターサービスをグローバルで提供する英国Coltテクノロジーサービス(Colt Technology Services)が、2025年12月9日、事業戦略説明会を開催した。

 アジア太平洋地域社長を務める水谷安孝氏は、特にこの2年間、Coltが日本およびアジア太平洋地域(APAC)における事業投資とサービス展開を加速させてきたことをふまえつつ、日本市場における今後の事業戦略を説明した。

 また、同社 COOのバディ・ベイヤー氏は、デジタルインフラの変化に合わせ、Coltがグローバルで取り組む「耐量子暗号通信サービス」「AI-Readyネットワーク」などのイノベーションを紹介した。

日本市場で2026年に注力していく3つの領域を紹介した

英Colt Technology Services COO(最高執行責任者)のバディ・ベイヤー(Buddy Bayer)氏、同社 アジア太平洋地域社長の水谷安孝氏

アジア太平洋/日本市場の伸びに注目、大型投資による開発が進行中

 Coltは、自社光ファイバーネットワークを基盤に、世界40カ国以上で事業を展開する法人向け通信/デジタルインフラ事業者だ。現在の顧客数はアジア太平洋地域(日本を含む)で2700社以上、グローバル全体で2万7000社以上に及ぶ。

 水谷氏は、1992年のColt設立からの歴史を振り返りながら、重要な転換点として、2014年の「KVH統合」、2023年の「米国Lumen Technologies EMEA(欧州/中東/アフリカ)事業買収」の2つを挙げる。

 前者については、日本で設立したKVHを統合した結果、外資系企業にもかかわらず日本法人にすべての会社機能が備わっており、日本単独での意思決定も可能な組織体系になっているという。また後者は、Lumen EMEA事業の買収と統合を通じて、欧州最大規模の法人向けネットワークプロバイダーとなったことで、「ビジネスのスケールが飛躍的に大きくなった」(水谷氏)と述べる。

 こうした動きに続いて、2024年からは、日本およびアジア太平洋地域における投資とサービス展開を積極化させている。東南アジア6カ国(フィリピン、台湾、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア)主要都市でのサービス開始、オーストラリアのシドニーにおけるメトロエリアネットワーク提供開始などだ。

 日本国内においては、2023年に発表した西日本へのネットワーク拡張計画が進行している。大阪~福岡間を600km超の長距離ネットワークで接続すると同時に、福岡/広島/岡山の3都市でメトロエリアネットワークを構築し、各地にあるパートナーデータセンターなどと接続を進める。

西日本(福岡、広島、岡山)へのネットワーク拡張と同時に、東京-大阪間を結ぶ第3のルートも構築中であり、南海トラフ地震などの災害発生に備える

「海外展開を進めたい日本の大企業」のインフラパートナーとして

 水谷氏は、日本国内で現在、ビジネスが大きく成長している領域として「ハイパースケーラー」「エンタープライズ」「キャピタルマーケット(金融市場)」の3つを挙げた。

 大手クラウドサービスプロバイダーのほか、SaaSプロバイダーやAIサービス事業者などを含むハイパースケーラー領域のビジネスは、過去3年間の年平均成長率(CAGR)が27%に達しているという。

 水谷氏は、大手クラウドサービスプロバイダーが日本へのAI投資を強化している現状を説明したうえで、ハイパースケーラーの顧客が必要とする大容量のデータセンター間接続、海底ケーブル陸揚局とのバックホール接続、長距離ネットワーク接続といったサービスを、顧客ニーズを理解しながら提供していきたいと語る。上述した西日本へのネットワーク拡張も、そうした取り組みの1つだという。

 2つめのエンタープライズ領域では、エンタープライズネットワークの複雑化や帯域幅の拡大が、ビジネス成長の背景になっていると説明する。サービスポートフォリオの拡大によって、海外拠点も含めた拠点間接続、マルチクラウドへの閉域接続、SD-WANによる柔軟な拠点追加、NaaS(Network as a Service)による帯域制御、リモートワーク従業員向けのゼロトラストアクセスやモバイル回線など、幅広いニーズにワンストップで対応するべく、サービスポートフォリオを拡充している。

エンタープライズ領域では、ネットワークの複雑化と大容量化、そこで求められるサービスの多様化が進んでいる

 なお来年(2026年)1月からは、イーサネット専用線接続サービス「Colt Ethernet」において、NTT東日本/NTT西日本が提供する「Interconnected WAN」がアクセス回線として利用可能になる。これにより、これまで主要都市部でしか利用できなかったColt Ethernetサービスが、日本の全県域から利用できるようになる。NTT東西のアクセス回線を含めて、Coltからワンストップで提供できる点も利便性が高いとする。

 水谷氏は、海外進出する日本企業が利用するケース、その反対に、日本に進出する海外企業が利用するケースの双方でメリットがあるとしたうえで、販売目標を「初年度で100件以上」と述べた。

NTT東西のアクセス回線を通じて、Colt Ethernetへの接続可能エリアが大幅に拡大

 最後のキャピタルマーケット(金融市場)領域については、各国の金融市場との超低遅延接続ネットワークに加えて、市場データのフィードサービス(配信サービス)にも注力していると説明した。現在は、80以上のデータフィードサービスを展開している。

各国金融市場のデータを高速配信するビジネスも手がける

 それぞれの成長領域における取り組みを説明したうえで、水谷氏は、2026年以降のサービスでは特に「日本から海外への拡大展開を図る大企業層」への働きかけを強めていく方針だと強調した。Coltがパートナーとなり、企業が各国の海外拠点に敷設するネットワークをワンストップで調達し、運用やサポートも一元化できる強みを生かす戦略だ。

 「すでに今年、Coltが欧州で国をまたぐ形でネットワークを提供できるということをご理解いただき、『欧州でのネットワークをすべてColtに任せたい』と言っていただいた(大手日本企業の)ケースが、数件出てきている」(水谷氏)

 また、日本企業へのセールスにおいては、企業の技術パートナーであるSIerとの連携が不可欠であることから、SIerが利用しやすいサービスの開発にも引き続き注力していくと説明した。

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