NTTドコモがサッカーのJリーグと推進する新しい協業ビジョン「チームになろう。」プロジェクトは、2017年6月に締結したトップパートナー契約をさらに発展させるものです。サッカーが持つ魅力を通じて「地域」と「サポーター」、そして「クラブ」との繋がり方を、より多様に、楽しく、新しく進化させ、感動を共有する仲間を増やすことを目指しています。
この取り組みについて、NTTドコモ コンシューマーサービスカンパニー カスタマーサクセス部 アライアンス戦略 大石 望氏とコンシューマーサービスカンパニー エンターテイメントプラットフォーム部 コンテンツビジネス スポーツコンテンツ 時田康史氏、そして、FC東京のマーケティング本部 エリアプロモーション部長 田中翔一朗氏、パートナー事業本部 事業部 山元ほるん氏の4名にお話を聞きました。
クラブ側が現在取り組む課題や、ドコモとの連携による期待について、ITとサッカーの両面からその実態と未来を追います。
ドコモとFC東京、パートナーシップの深化とビジョン
ドコモのブランドスローガン「つなごう。驚きを。幸せを。」と、Jリーグの成長戦略「60クラブが、それぞれの地域で輝く」という両者のビジョンが合致し、「チームになろう。」プロジェクトが発足したと言います。
FC東京側によると、この連携はドコモ側からの声がけが発端であり、さらにはFC東京の川岸社長が元々ドコモ出身であるという背景も影響しています。FC東京は、ドコモとの関係を「スポンサーシップではなくパートナーシップ」と位置づけており、どちらが上という関係ではなく、共に歩むことを重要視しています。
ドコモ側からも、施策がFC東京にとってどのようなメリットをもたらすのかという議論を多く投げかけてくれるため、バランスの取れた関係に感謝しているとのことです。
地域密着を加速させる具体的な施策
日常が応援に変わる「推しJクラブ応援キャンペーン」
「チームになろう。」プロジェクトでは、ファン・サポーターが日常の中でクラブとの繋がりを感じられるよう、多様な取り組みが展開されています。
特にサポーターから大きな反響を呼んでいるのが「推しJクラブ応援キャンペーン」です。これは、dポイントクラブアプリ上でモバイルdポイントカードの券面を対象クラブのデザインに「きせかえ」て、dポイントを貯めたり使ったりすると、貯まったdポイントの5%相当の金額がドコモから対象クラブに応援金として届けられる仕組みです。なお、この応援金によってユーザーのdポイントが減額されることはありません。
サポーターからは「さっそくきせかえ完了」「普段の買い物でアビスパ(福岡)を支援します」といったポジティブな声がSNSなどで多数寄せられており、クラブへの支援を身近に感じられることがモチベーションにつながっています。
また、d払いの券面にも対応したことで、日常の買い物で決済時にクラブを意識する機会が増え、ファン・サポーターにとってクラブがより身近な存在になっています。
さらに、ファン・サポーターが「チームの一員」として地域とつながるための取り組みとして、「d払い×クラブ応援店」の拡大も進められています。これにより、クラブを中心とした地域経済の活性化も目指しています。
スタジアム通信環境の改善と課題解決
FC東京は、ビジネス的な課題として、味の素スタジアム周辺の電波環境の不安定さを挙げていました。特に試合のない日は人が来ないため、通常は基地局の整備の優先度が高くないという背景があったものの、ドコモはこれに対し、試合当日などにブース周辺の電波を補強し、決済環境の快適化を進めています。
ドコモは、2026年7月末までに、全国のJリーグクラブホームスタジアム全59ヵ所の通信環境をさらに向上させる計画です。目標は、試合当日の混雑時でも、動画視聴やd払いなどのバーコード決済が快適に利用できるようにすることです。
FC東京が語る「ドコモ連携」の課題と期待
FC東京のホームタウンは東京都全域ですが、都心部や東エリアでは、まだまだファン・サポーターを増やす余地があると感じています。ドコモが持つ都心部のドコモショップ網を活用した「応援店舗」の展開は、そういったエリアでの連携として非常に意義深いと評価されています。
また、ドコモとの連携における最大の期待の1つはデータ活用(DX)です。FC東京が保有するCRMデータ(会員情報)と、ドコモのdポイントデータなどを結合することで、スタジアムに来場する顧客だけでなく、「デジタルでどのような活動をしているか」といったユーザーデータを把握できる未来を目指しています。これにより、サポーターへの満足度の高いサービスの提供が可能になると期待されています。
ドコモが運営に携わる国立競技場についても、FC東京は将来的な活用に期待を寄せています。ドコモは、FC東京のファンではない人たちに対しても、ビッグデータや店舗網を活用して、いかにファン・サポーターを増やせるかという議論をクラブ側と積極的にしているといい、FC東京にとって心強いバックアップとなっています。
【まとめ】Jリーグとドコモ、地域と共創する未来像
「チームになろう。」プロジェクトは、ドコモ、クラブ、サポーターの三者が互いに利益を得る「ウィンウィンウィン」な持続可能な取り組みとして設計されています。たとえば、「推しJクラブ応援キャンペーン」は、クラブへの寄付を通じてサポーターの購買意欲を高め、dポイントやd払いを含むドコモサービスの利用を促進します。
また、Jリーグのファンではない層や、スタジアムに足を運ばないライトユーザー層(軽度なファン)に対し、ドコモショップやドコモMax(DAZNが無料で見られるプラン)といったドコモのアセットを通じて、日常的にクラブを意識する機会を提供しています。これにより、サッカーを核として、地域とクラブ、そして人との繋がりをさらに強化していくことが可能です。
この強力なパートナーシップは、単なる資金提供にとどまらず、IT技術と広大な顧客基盤を活用し、フットボールが日常に深く溶け込む「サッカーのある生活」を実現しようとしています。これは、地域活性化とクラブの成長を同時に実現する、現代のスポーツビジネスにおける新たな共創モデルと言えるでしょう。

















