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「Microsoft Ignite 2025」でインテリジェンスプラットフォームを発表

AIエージェントはユーザーと業務を理解する必要がある マイクロソフトが新サービス名に「IQ」を付与した理由

2025年11月20日 14時30分更新

文● 吉井海斗 編集●大谷イビサ

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Work IQ、Microsoft Copilot、AIエージェントの連携によって、「業務を理解するAI」が実現できる

 米マイクロソフトは米国時間2025年11月18日、年次カンファレンス「Microsoft Ignite 2025」を開幕した。テーマは「フロンティアファーム(フロンティア企業)」。AIがビジネスや仕事のあり方を根本的に変える時代を、企業が先取りしていくためのさまざまな技術を紹介した。本記事ではAIとデータベース、セキュリティについての発表を紹介する。

フロンティア企業には業務を深く理解するAIエージェントが必要

 米マイクロソフトが年次カンファレンスで、AIエージェントを次の段階につなげるさまざまな発表を行なった。データだけではなく、企業それぞれの業務やビジネスについての理解に基づき、踏み込んだ自動化や支援ができる世界を実現するという。

 今回マイクロソフトは、企業のデータとビジネスをより深く関連付ける一連のサービスを、「~IQ」という名称で発表した。これまでもベクトル化などによるデータの意味的な管理は広く行なわれていたが、今回マイクロソフトが力を入れたのはデータを活用するユーザー、企業、業務の理解だ。この理解に基づいてデータやAIエージェントを活用できるようにし、かゆいところに手が届く、業務プロセスにより深く踏み込んだ支援ができると同社は訴えている。

 まず、「Microsoft 365」に特化したIQ機能として「Work IQ」を発表した。Work IQはユーザーとその業務、所属組織を理解する。作業データ、作業フローや習慣に基づき、利用すべきエージェントなどについてインテリジェントな提案ができるという。

 統合データ分析プラットフォーム「Microsoft Fablic」で発表したのは「Fabric IQ」。新機能により、Microsoft Fabricは統合データプラットフォームから統合インテリジェンスプラットフォームへと進化するという。

 Fabric IQでは、論理統合データベースである「OneLake」に格納されたデータをビジネスと結び付けて管理する。データのコンテキストはリアルタイムで更新される。「Fabric IQはモデリングツールをはるかに超えた存在だ。全てのチーム、アプリケーション、AIエージェントのためのセマンテックなバックボーンになる。社内で最も経験の深い専門家と同じレベルで、ビジネスについての認識を持つことができる」(マイクロソフト)。

 さらにこれらの上位概念とも言える存在として、「Foundry IQ」が登場した。これはWork IQ、Fabric IQに加え、カスタムアプリケーションやWebをカバーする知識管理システム。全ての情報に文脈を与えて管理し、高いレベルの推論を実現するという。

 こうしたIQ機能を統合的に活用するエージェント構築基盤が「Microsoft Agent Factory」。単一の料金プランで、「Microsoft Foundry」や「Copilot Studio」を使い、AIエージェントを構築できる。作ったエージェントは、Microsoft 365を始めとしてどこにでも導入できるという。

 Windows自体もAIのキャンバスへと進化する。AIエージェント機能をWindowsに組み込むことで、Copilotなどのエージェントが複数のアプリ、ファイル、システムにまたがってタスクをオーケストレーションできるという。

SQL Server 2025は一般提供を開始、Azure HorizonDBを投入

 Microsoft Azure上のデータベースサービスについても、AIニーズを取り込む刷新が進んでいる。

 まず、「SQL Server 2025」は一般提供が開始となった。AI機能をSQL Serverエンジンに直接統合し、T-SQLでのモデル管理を可能にしている。

 「Azure DocumentDB」も一般提供が始まった。MongoDB互換のドキュメント・データベースで、マルチクラウドおよびハイブリッドNoSQLに対応し、ベクトル検索などのAI対応機能を提供する。

 さらに「Azure HorizonDB」の早期プレビューも発表された。これはPostgreSQL互換のフルマネージド・データベースサービス。ベクトル検索機能を組み込み、AIモデル管理を提供する。

セキュリティもAIエージェントで進化

 セキュリティの確保は多くの企業にとってますます頭の痛い問題になっている。これに対して、マイクロソフトはセキュリティ業務を自動化する「Microsoft Security Copilot」の強化、Windowsプラットフォームのセキュリティ向上、レジリエンスの向上を中心に発表を行なった。

 Security Copilotエージェントでは、「Microsoft Defender」「Microsoft Entra」「Microsoft Intune」「Microsoft Purview」にわたり、12の新しいエージェントを発表した(プレビュー段階)。

・セキュリティオペレーション(Defender)エージェントでは、リアルタイムでのアラートトリアージ、脅威インテリジェンスの提示、自然言語による脅威ハンティングができる。

・アクセス管理(Entra)エージェントでは、ユーザーのリスクに応じて条件付きアクセスのポリシーを最適化し、アクセスレビューを自動化する。ゼロトラストポリシーに基づき、高い精度できめ細かく制御できるという。

・データセキュリティ(Microsoft Purview)エージェントでは、データの発見・分析、機密データリスクの低減を自動化する。

新たに発表されたSecurity Copilotのエージェント群

 一方、Microsoft Security Storeでは、30以上の新たなパートナー製エージェントが提供されている。セキュリティエージェントはマイクロソフトの脅威インテリジェンスを利用できる。また、プレビュー段階の社内ナレッジ統合機能を基に、自社の環境に即したアクションの提案を受けることが可能になる。

Windowsでは安全なAIエージェント活用のための機能を発表

 AIエージェントの安全な活用のため、Windowsにも新たな機能が追加された。注目される点の一つは、エージェント専用のアカウントの導入だ。AIエージェントには、ユーザーアカウントとは別の専用アカウントが割り当てられる。アクセス権限は最小限に設定でき、明示的に許可されたリソースにのみアクセスすることになる。

 その上で「Agent Workspace」(プライベートプレビュー段階)では、 エージェントが自律的に人間と同様なソフトウェア操作を行ない、タスクを実行できる。エージェントの動作は監査可能だ。

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