静かに展示されていた、そのマイク
国内最大級の音と映像・通信の展示会「Inter BEE」で、思いがけず“音響の歴史の生き証人”に出会った。
米シュアが1939年に販売していた「MODEL 700D」というマイクロホンだ。
同社の展示ブースの一角に、最新のワイヤレスシステムやデジタル機器と並んで、ひっそりとガラスケースに置かれていこの個体。
当時、双方向ラジオ(無線通話)や公共アドレス(PA)用途に使われていたマイクロホンで、いまではほとんど実機を見る機会がない歴史的なモデルだ。
角度を自在に変えられる“可変ヘッド”
MODEL 700Dの特徴は、ヘッド部が角度調整できる構造にある。当時のマイクは据え置き前提が多く、話者の位置に合わせて、柔軟にポジションを変更できるモデルは限定的だった。
しかし700Dは、ヘッドを傾けることで使用環境に合わせた“狙い”を調整するという、いまに続くマイク設計思想の原型をすでに体現していたのだ。
メタルボディの重厚感と、木材が印象的なデザインは、かつての工業製品らしい質実剛健さを備えている。普段は最新技術が主役のInter BEEだが、こうした歴史的なマイクが静かに存在感を放っているのもまた、このイベントの魅力のひとつだろう。
Inter BEE 2025は、幕張メッセで11月21日まで開催中だ。









