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Anthropic日本法人設立、データ国内処理で日本市場に最適化

2025年10月29日 17時55分更新

文● サクラダ 編集●飯島恵里子/ASCII

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左から右にAnthropic グローバルアフェアーズ(国際関係)責任者 マイケル・セリット氏、Anthropic Japan代表執行役社長 東條英俊氏、Anthropic 国際事業マネージングディレクター クリス・シアウリ氏、Anthropic 最高商務責任者(CCO) ポール・スミス氏

 大規模言語モデル「Claude」シリーズを開発するAnthropicは10月29日、日本法人「Anthropic Japan合同会社」の設立および東京オフィスの開設を発表し、日本市場への本格参入を表明した。あわせて安全性を最優先事項とする同社のミッションに基づき、日本のAIセーフティ・インスティテュート(AISI)とAIの研究・評価推進に関する協力の覚書を締結したことも明らかにした。

 発表に伴い、共同創業者兼CEOのダリオ・アモデイ氏も来日し、高市総務大臣と会談するなど、日本市場への強いコミットメントを示した。

「安全性」と「ローカライズ」を軸に日本市場へ本格参入

 発表会に登壇したAnthropic Japan代表執行役社長の東條英俊氏は、「すでに多くの日本企業がClaudeサービスを利用している」と日本市場の重要性について話し、技術サポートやユースケース発掘の迅速な提供が日本法人設立の大きな理由であるとした。

Anthropic Japan代表執行役社長の東條英俊氏

 また、「日本は“安全・安心”に対して非常にセンシティブな国」と述べ、Anthropicが掲げる「安全性を最優先にしたAIの研究」というミッションと、日本市場の特性が強く共鳴すると強調した。

 同社はAIの安全性を担保するため、具体的なアプローチを複数実行している。AIの“ブラックボックス”問題に対し、その思考プロセスを解明する「解釈可能性(Interpretability)」の研究や、収益追求以上に安全性の担保をミッションとするPBC(Public Benefit Corporation:公益法人)としての体制がその例だ。

 さらに「責任あるスケーリングポリシー(RSP)」という独自の安全基準を策定。ASL(安全レベル)を1から5で定義し、新モデルのリリース前には必ず安全対策を講じるアプローチを採用している。東條氏は「問題が起きてから対応するのではない」と、その姿勢を明確にした。

 日本市場への投資として、ローカライゼーションにも注力している。ネイティブレベルの流暢な日本語品質はもちろん、日本の文化や商習慣も学習させ、ビジネスシーンで不可欠な「敬語の流暢さ」も追求しているという。

 特に日本のエンタープライズユーザーが懸念するデータレジデンシー問題についても対応。AWS Bedrock経由で提供される「Sonnet 4.5」モデルでは、データが海外に出ることなく完全に国内で処理が完結する仕組みを整えたという。

 日本国内での利用はすでに拡大しており、既存顧客は数百社にのぼる。発表会では、楽天が新機能の投入時間を80%短縮した事例や、クラスメソッドが「Claude Code」の活用で生産性を10倍向上させた事例が紹介されたほか、メルカリやみずほフィナンシャルグループでの活用も進んでいるという。あわせて、AWSのリセラープログラムや他のパートナー経由での販売も正式に開始する。

 同社の「Economic Index」による分析では、日本市場のユニークな利用動向も明らかになっている。東條氏によれば、単なるタスク自動化にとどまらず「深く調査したり、学んだりするために使われる傾向が強い」といい、特に「翻訳サービス」としての利用は世界平均の1.5倍に達しているという。

 日本市場でのGo-to-Market戦略として、エンタープライズ向けの営業・技術支援チームの強化、実装を担うSIerなどとのパートナーエコシステムの構築、「Claude Code」の強みを生かしたデベロッパーコミュニティの支援 を推進する。将来的には、日本国内にリサーチ機能を設置する構想もあると話した。

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