NTT西日本は10月27日、実演家の「声」の権利を守り、その価値を高める音声AI事業「VOICENCE」(ヴォイセンス)を開始したと発表した。
生成AIの普及に伴い、「声」の無断利用やフェイク音声の拡散が社会問題化している。しかし日本では、肖像権やパブリシティ権の一部でしか対応できず、「声の権利」を直接保護する規定は存在しない。
VOICENCEはAI音声合成と同社が開発・活用するトラスト技術を通じて、「実演家から提供された音源データ」「それを学習させ生成したAI音声モデル」「そこから作成したAI音声およびコンテンツ」といった音声に関連する知的財産を“音声IP”として保管・管理するプラットフォームを構築。
これにより、声を守ると同時に、声を正しく活用し、経済・社会に新たな価値をもたらす正規ライセンス市場を整備することで、企業やクリエイターによる健全な“音声IP”の活用を促進するという。


実演家に対しては、「実演家に正式に許諾された公認AI」の真正性証明と契約に紐づく用途証明のデータが付与された“音声IP”を、安心して運用できる仕組みを提供する「音声IPライツマネジメント機能」を提供。
音声IPを活用するクライアント企業に対しては、クライアントのニーズに応じて、最適な音声IPのキャスティングから企画・制作・運営まで、音声にまつわるソリューションやコンテンツを一貫してプロデュースする「音声コンテンツ企画・制作機能」を提供する。
なお、VOICENCEでは俳優や声優など複数の著名人がパートナーとして声のデータを提供。10月現在、俳優の別所哲也氏、声優の花江夏樹氏、春日望氏、バーチャルタレントのKizunaAI(キズナアイ)氏などの声が登録済みとなっている。
VOICENCEパートナー ※2025年10月現在、公開許諾パートナーのみの記載
IT・コンテンツ領域では、AI技術による「声」および「音声データ」の活用が広がる中、真正性や権利管理の課題によるビジネス上の不利益が浮かび上がっていた。
NTT西日本による今回のサービス開始は、こうした課題に対する一つの応答といえる。今後は、音声のIP化を巡る制度整備や事業化の動向にも注目が集まるだろう。








