ミドルエイジからの資格取得は掛け算が正解②

好きや得意から資格を取得! 自分の強みを見つけて掛け合わせていくのが最適解

文●杉山幸恵

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 これからのキャリアにおいて、資格をより活かすには一つだけでなく、複数を掛け合わせることが重要。そう考えるのはITエンジニアだった知見を生かしながら、社労士と行政書士、中小企業診断士として企業向け支援を行う、資格ソムリエの林雄次さん。まず取得すべきは自身のキャリアの延長や近い部分での資格、そして次に目指すのは自分の〝好きなこと〟や〝得意なこと〟といった、個人の本質に焦点を当てたものをすすめるという。では、それをどのように資格取得と結びつけ、強みに変えていけばいいのか、資格の掛け算に向けた次のステップについて聞いてみた。

〝好き〟〝できる〟〝やって欲しい〟の黄金トライアングルを見つける

 第1回ではミドルエイジが資格を取得する意味をはじめ、キャリアアップや副業などに有効な資格などについて林さんが解説。特別なキャリアがなくても挑戦できて、しかも実用的な資格を選ぶなら「基本的には、自分のこれまでのキャリアが活かせる資格や、今いる分野の周辺で名前をよく聞く資格、目にする資格を選ぶのがベスト」と教えてもらった。

 続く第2回では、ベースとなる資格に掛け合わせる資格はどうすべきかを探っていく。

 「資格取得の軸をキャリア以外の〝好きなこと〟や〝得意なこと〟に置くのも大いに有効。この考え方のベストな形は、〝好き(得意)〟〝できる〟〝やって欲しい〟の3つが重なる部分を見つけることです。

 この〝やって欲しい〟とは、世の中のニーズのこと。今で言うと、世間一般で求められているIT系のスキルなどが思い浮かびがちですが、それだけではありません。それよりも、〝周囲から自分が何を期待されるか〟という視点を持つことが重要です。自分が周囲に何を提供できるか、周りが自分に何を期待するのかを考えてみましょう」

 なるほど、周りが自分に期待していること=すなわち自分の強みであるわけだが、自分自身では極めて気づきにくいもの。なぜなら、自分にとっては日常すぎて、それが強みだとピンとこないことが多いからだ。

 「〝強み〟って言葉にすると、ちょっとギラギラした印象がありますよね(笑)。だから、『周りから見て、私って何が得意そうに見える?』とか『何が得意だと思う?』みたいに、もう少し柔らかい言い方で聞いてみてもいいと思うんです。

 強み探しというとつい直球で『私の強みは何?』となりがちですが、そんなに構えなくても大丈夫。それに、職場など限られた場面でしか関わりのない人に聞いても、その人の一面しか見えていないことが多いですよね。

 だからこそ、まずは自分自身で過去を振り返ってみることも大切だと思います。得意だったこと、好きだったことを簡単に書き出してみる。そう、〝自分が持っている材料の棚卸し〟ですね。

 自分の中の材料を一番よく知っているのは、やっぱり自分自身です。自分の強みを見つけるのは誰にとっても難しいものですが、その材料を整理するところから始めるのが、一番の近道だと思います」

 最近ではMBTI診断などもポピュラーだが、林さんは「タイプに当てはめるだけでは自分だけの強みは掘り起こしにくい」と考える。まずは自身の過去を振り返り、得意だったことや好きだったことをまとめ、ライフラインチャートなどを作成。それをもとに、周囲の人に聞いてみるのがスムーズだそう。

資格にもう一つ要素をプラス! 自分だけのオリジナルメソッドで唯一無二をつくる

 資格を武器としてキャリアに活かすためには、自分なりの解釈や組み合わせでプラスアルファをすることが重要だと、林さんは説く。

 「例えば、整理収納アドバイザー。ハウスキーピング協会主催の民間資格で、2級は受験資格がないため、保有している人が非常に多い資格の一つです。しかし、世界的にも活躍する近藤麻理恵さんは、そこに一見違う角度の〝ときめく〟という気持ちの面のメソッドを入れたことで、スーパー大ブレイクしました。

 資格の知識はあくまでベースです。それをトレースするだけでは、多くの人の中に埋もれてしまいます。まずは資格を身につけた上で、その殻を破り、自分のオリジナルの方へ向かうことが大事なのです」

 そう語る林さんだが、自身も最初は強みをまったく活かしきれていなかったという。ITエンジニアとして会社で働きながら兼業として社労士として開業したが、それほど仕事は多くなかった。しかし、「ITのキャリアがあって、デジタルに詳しい人」と「社労士」を両立しているのは珍しいのでは?というアドバイスで道が拓けることになったのだ。

 「今でこそ、デジタル士業®と名乗っていますが、最初は自分でピンときていませんでした。『こんな組み合わせを欲しがる人なんているはずない』と思いながら、〝デジタルに詳しい社労士〟と名乗ってみることにしたんです。すると状況は一変。興味を持っていただけるようになり、徐々に仕事が増えていきました」

 整理収納アドバイザーであれば、そこに風水アドバイザーといった別の要素を組み合わせてアピール軸を尖らせるなど、一見意外な組み合わせでもまずは試してみる。今すぐ仕事につながらなくても、ブログやSNSなどで発信し、テストマーケティングをどんどんやってみることが吉だという。

 「実際にやってみないと、何が自分に合うかは分かりませんから。最初は模倣からでも全然いいと思います。やっていくうちに『こうしたい』『ここを変えたい』という気持ちが出てきて、そこから自分なりのオリジナルが生まれるはずです。誰かをただ追いかけるだけでは難しいかもしれませんが、真似をしながら自分らしさを探していく…そんな姿勢が大事ではないでしょうか。

 それに今、存在しない組み合わせだからといって、やっちゃいけないわけではないんです。たまたま誰もまだ挑戦していないだけ。今ある組み合わせだけが〝正解”というわけでもないので、もっと自由に発想していいと思います」

山の知識検定に唐揚検定も⁉ 趣味・興味を深めるユニークな資格・検定の数々

 資格と比べると実用性はないが、簡単に取れて話題になるような趣味系のライトな検定も、話の種として有効活用できると林さんはおすすめする。レモン検定からおにぎり検定、さば検定まで、メジャーな食べ物や飲み物はほとんど資格検定があるといっても過言ではないという。

 「私はたまに山登りをするのですが、調べてみたところ〝山の知識検定〟というのを発見し、かなり楽しく受けることができました。そういった趣味を活かした検定以外に食べ物系は、名刺に記載すればすぐにアピール材料として使えます。なかには難易度が高いものもありますが、多くはすぐに取れるような簡単なものなので、ちょっとしたスキマ時間を見つけて取得できるはずです」

 唐揚げに関する知識を証明するための資格で、取得するとカラアゲニストとして活動ができる唐揚検定。地域の歴史や文化、観光などに関する知識習得を証明できるご当地検定。この2つを国内旅行業務取扱管理者が取得すると?という例を挙げてもらった。

 「全国にあるご当地唐揚げを中心に地域の〝食〟の魅力を活かしたユニークなツアーやイベントが企画できるでしょう。〝旅行のプロ〟から〝グルメ旅行のプロ〟へ。これがまさに資格の掛け算です。しかも唐揚検定は受検料無料でオンライン受検という手軽さ。私も取得しましたが、保有する資格の中でも『これは何ですか⁉』と聞かれて、ツカミになるものの代表格です(笑)。

 一度、自分の興味や趣味に〝資格・検定〟といったキーワードで検索してみてください。意外な発見があるはずです。ひょっとしたらライトな検定だけでなく、自分に合った仕事につながる資格が見つかるかもしれません。

 また仕事に直結しなくても役に立つこともあります。たとえばワインエキスパート。ワイン愛好家向けの民間資格なのですが、かなり難関で私自身、苦労して取得しました。ブドウの品種や産地を知っていればお酒の席でもベストマッチなものを選べますし、ワインを贈る時にも喜んでもらえるなど、人付き合いの面でもいい影響をもたらしています」

 そんな趣味系資格ではあるが、もっと直接的に仕事につなげることはできるのだろうか?その答えはイエスだと、林さんは言う。

 「好きなことを活かして、それを教える〝先生的なサービス〟を始めるのは大いにアリです。ここで大事なのは、マニアックな知識ではなく、初心者向けの基礎知識こそが求められているということ。

 例えば、ワインであれば、マニアックな生産者ごとの特徴よりも、ブドウ品種や基本的な作り方といった一般の方が知りたいことにニーズがあります。『そんなことでいいの?』と思われる程度の基礎知識の方が、初心者にとってはありがたがられることが多いのです」

 自分の〝好き〟を切り口に、誰かの役に立つサービスを提供する。まずは副業レベルかもしれないが、資格を仕事につなげる第一歩として試してみる価値は大いにありそうだ。

 さて、次回はいよいよ具体的な〝掛け算〟の事例を紹介。自分のキャリアをベースに、意外な資格を掛け合わせることで、どのようにライバルに差をつけ、未来の可能性を広げられるのかを解説してもらう。

中小企業診断士や社会保険労務士、行政書士などの士業のほか、整理収納アドバイザーやアロマテラピー検定、サウナエキスパートなど、保有する資格・検定は600以上という林雄次さん。なんと僧侶の資格も持つ

資格の組み合わせ方や、それぞれのメリット、取得後の活かし方などを詳しく紹介した「かけ合わせとつながりで稼ぐ 資格のかけ算大全」(実務教育出版)。資格を稼ぎにつなげる知恵が詰まった一冊だ

Profile:林雄次

はやしゆうじ/1980年東京都生まれ。はやし総合支援事務所代表。エンジニアとしてIT関連企業に勤務する傍ら、複数の法律系国家資格を取得したのを機に独立。中小企業診断士、社労士、行政書士、情報処理安全確保支援士などとして企業向け支援を行うほか、「資格ソムリエ」「デジタル士業」としてさまざまなメディアで活躍中。現在、保有資格・検定は約600を超え、僧侶の資格も持つ。『資格が教えてくれたこと 400の資格をもつ社労士がみつけた学び方・活かし方・選び方』(日本法令)、『行政書士・社労士・中小企業診断士 副業開業カタログ』(中央経済社)、『かけ合わせとつながりで稼ぐ 資格のかけ算大全』(実務教育出版)など著書も多数。

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