ミドルエイジからの資格取得は掛け算が正解①

40・50代女性が資格を取る意味とは?現在のキャリアを最大限に活かした資格探し

文●杉山幸恵

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 ミドルエイジはこれからの働き方を考える大切なタイミング。さらなるキャリアアップを目指したい、転職したい、起業したい、副業したい、老後の働き方に備えたい。でも、実際にはどう動けばいいのか、最初の一歩の踏み出し方がわからない人も多いのではないだろうか。そんな時に選択肢の一つに入れてみたいのが、自身の強みを活かす資格を取得するということ。では果たして〝資格取得〟はこれからの働き方に向けてどう有効な選択肢になるか、どんな資格を取得するべきなのかなど、気になることは尽きない。そこで、資格取得の第一人者である林雄次さんに、ミドルエイジからの資格取得の価値、そして失敗しないための現実的なステップなどを3回にわたって教えてもらう。

40代・50代こそ、資格で〝人生の経験〟をカタチにしやすい年代

 ITエンジニアとして勤務していた会社に資格取得支援制度があったのをきっかけに、さまざまな資格を取得していった林雄次さん。まずは仕事にも直結するIT系の資格を皮切りに、簿記や販売士といったビジネスの中身に関するもの、さらに社会保険労務士の資格も取得した。社労士として副業を始め、ついには独立を果たすことに。

 現在、保有する資格は社労士のほかにも、中小企業診断士や行政書士、社会福祉士、防災士をはじめ、整理収納アドバイザーやソムリエ/ワインエキスパート、さらには僧侶にいたるまでなんと600以上。士業事務所運営とあわせて「資格ソムリエ」「デジタル士業」として各メディアで活躍し、スキルアップやリスキリング、モチベーション、時間術、勉強法、効率化、DX、AIなど、幅広いテーマで講演や執筆に従事している。

 そんな林さんが多くの資格を取得したことで気づいたのは、資格は掛け合わせていくことでより輝くということ。では、どのように資格を掛け合わせればいいのか、そもそもミドルエイジから取得すべき資格は何なのか。そんな資格について気になるあれこれをじっくりと教えてもらうシリーズ連載。1回目となる今回は、40代・50代女性が資格を取得する意味や、キャリアを活かす〝入り口資格〟、失敗しないための注意点について聞いていく。

 「40代、50代のミドルエイジ世代は、これまで歩まれてきたキャリアや、人生の経験がしっかりとある年代です。資格とは、そこで培ってきたスキルや経験を会社や組織の中だけでなく、どこでも通用するカタチにするための第三者認証です。

 また、資格取得という新しいことにチャレンジする積極的な姿勢を、次世代の若手に見せるという価値もあります。〝資格で若手に背中を見せる〟というと少し大げさに聞こえるかもしれませんが、比較的簡単に取得できる資格であっても、若い人たちが目標を見つけるための小さなマイルストーンを示すことにつながるのではないでしょうか。

 そして、もちろん会社勤めの方だけでなく、結婚・出産を経てキャリアから離れた専業主婦やパートの方にとっても、資格取得は非常に有効です。なぜなら、会社勤めではない方こそ、自分のスキルを目に見える形で客観的に証明するのが難しいからです。資格は、社会復帰を目指すうえでも、自身のポテンシャルをしっかり見せることができる材料になります。つまりは取得した資格が履歴書でアピールしやすい〝ラベル〟となるのです」

 加えてすぐに取得した資格を必要としなくても、リスキリングや学び直しという点においても役立つという。

 「新しいことを学ぼうと思っても、自分で本を買って研究するのはなかなか大変ですよね。もちろんそれも本格的な学び方ではありますが、もう少し気軽に始めたいときには〝資格を目標〟にするのも一つの方法です。資格試験のテキストは、その分野の初歩から大切なポイントまでが短く整理されていて、学びの取っかかりとしてとても効率的だと思います」

時間とお金をムダにしないために、ミドルエイジの資格取得で注意すべきこと

 仕事をしながら、家事や子育てをしながら。そんな多忙を極めるミドルエイジからの資格取得はハードルが高いと考えがちだが、近年、取り組みやすくなったものも増えてきているという。

 「以前は紙の試験だった簿記やファイナンシャルプランナーなどの資格の多くが、CBT化(コンピュータを使った試験)されました。主要な駅にあるテストセンターで年中、好きなタイミングでオンライン受検できるようになっています。また、YouTubeやeラーニングなどのコンテンツも充実。従来の分厚いテキストを買ってとか、予備校に通ってとかだけでなく、学びの選択肢が格段に広がっています」

 さらに時間的・経済的な損失を防ぎ、無駄なく資格取得を成功させるために注意すべきことが3つあるという。

 「1つ目は〝いきなり大物を狙わない〟ことです。士業を目指すとしても社労士、行政書士、中小企業診断士まで。それ以上の難関資格である司法書士や税理士、IT系資格にしてもプロジェクトマネージャーなどは、人生の貴重な時間や費用を投じるリスクの高い挑戦になります。

 実際、ネットなどには『一発で難関資格を取得した体験談』や、一気に高みを目指すことを推奨するような記事があふれていますが、そういった武勇伝的なストーリーは現実的ではありません(笑)。

 だから一念発起するのもいいですが、まずは本当にどうしてもその難関資格が必要なのか、自身と向き合ってみてください。年齢的にも途中で挫折した場合の損失は、想像するより大きいものです。最初からエベレストに挑むのではなく、まず目指すべきは高尾山。ライトな資格で適性を確認するのが賢明です」

 2つ目は、やたらと高額な〝資格商法〟に注意することだ。また資格学校などのランキングもそのまま鵜吞みにするのはNGだと強調する。

 「ランキングに載っている資格は、結論から申しますと〝売りたいものリスト〟の場合がほとんどです。ネット上ではさまざまなランキングと称されるものを目にする機会がありますが、そこには〝さまざまな事情〟が含まれていると思ったほうがよいでしょう」

 そして3つ目は、林氏が最も重視しているという、ネガティブなことも含めた〝事前の徹底リサーチ〟だ。

 「資格を取得すると決めたら勉強に集中すべきなので、まずはテキストを買う前に徹底的に調べ尽くしておきましょう。その際、気になる資格の名前とセットで〝食えない〟〝欠点〟といったネガティブなワードも検索。いろいろな人の経験談や失敗例などもチェックしてみてください。そうすることで、後から不利な情報に惑わされることもなく、チャレンジする前にやめるという冷静な判断も可能になります」

キャリアに悩んだらまずはこれ! 汎用性最強のITパスポートがおすすめな理由

 資格を取得するうえで大切なのは「これまでに積み重ねた経験やスキルをフル活用すること」だと語る林さん。ただ、そうすると「特殊なキャリアがない…」「何を学べばいいのかすらわからない」という人におすすめできるような資格はあるのだろうか。

 「まずは初めての資格取得を目指すなら、簿記やファイナンシャルプランナーの3級など、エントリー的な位置づけから着実に取り組むのをおすすめします。これまでのキャリアの延長で自分に関係のありそうなものを選ぶのが基本ですが、特にこれといったターゲットが思いつかない場合にはITパスポートはいかがでしょうか。

 ITパスポートは、その名前の印象に反して、ITが占める分野は全体の半分以下にすぎません。残りはマネジメントや経営、法律的な内容など、世の中のトレンドも含めた幅広い知識をまるっと学べる資格です。つねに内容がアップデートされていて、最近では生成AIなどについてもカバーされています。

 さらに、ITパスポートとセットで取得しやすい情報セキュリティマネジメントの資格まで取っておくのも有効です。この2つがあれば、IT知識を持っていて実践もできるという、最低限でありながらも強力なアピールポイントになります」

 この2つの資格は異業種からIT業界への転職を目指すための材料としてはやや力不足だそうだが、最低限のITリテラシーや経営知識を身につけるにはかなり有効とのこと。ITではない職種でこそ、今後のキャリアにおいて役立つ場面が増えてくるという。

資格を〝取って終わり〟にしないために、取得後にすべき最初の行動とは

 さて、当然のことながら、資格を取得したからと言って、すぐにキャリアアップにつながるわけでも、仕事が舞い込んでくるわけでもない。資格を活かすための前提条件となるのが、周囲に知ってもらうことだそう。

 「資格を仕事や副業に活かすための第一歩は、取得したことを〝あちこちで話す〟こと。当たり前に思われるかもしれませんが、意外とこれをできていないパターンが多いです。活かしたいと思っていても、周りが知らなければ声の掛かりようがありません。名刺に資格を記載するのも手です。

 私自身、会社員時代に社会保険労務士の資格を取って名刺に載せていたところ、取引先から顧問契約の話が持ち上がり、そこから副業がスタートしたという実体験があります。まずは、会社でもプライベートでも、周りに知らせることが資格を仕事につなげるための最初のステップです。

 また、すぐにスキルを試してみたい場合は、ココナラといったスキルシェアサービスで講座をつくるなどして、人に教えてみるのも一つの手。まずは安い料金設定などで、実際にサービスを提供してみることは、副業的な経験を積んでいく過程で、貴重な勉強の機会を得られるはず。もちろん、SNSでの発信も、自分が身に付けたスキルをアピールするうえで有効な手段ですよ」

 まず第1回でご紹介したのは、資格取得をする前に知っておきたい大切なこと。次回は、仕事のキャリアだけでなく、〝好きなこと、得意なこと〟といった個人の強みから資格を考えることの有効性について、具体的な事例を交えながら掘り下げていく。

日本の資格・検定の公認アンバサダー、LEC東京リーガルマインドの資格ナビゲーターなど、資格にまつわる多くの分野で活躍している林雄次さん

資格の組み合わせ方や、それぞれのメリット、取得後の活かし方などを詳しく紹介した「かけ合わせとつながりで稼ぐ 資格のかけ算大全」(実務教育出版)。資格を稼ぎにつなげる知恵が詰まった一冊だ

Profile:林雄次

はやしゆうじ/1980年東京都生まれ。はやし総合支援事務所代表。エンジニアとしてIT関連企業に勤務する傍ら、複数の法律系国家資格を取得したのを機に独立。中小企業診断士、社労士、行政書士、情報処理安全確保支援士などとして企業向け支援を行うほか、「資格ソムリエ」「デジタル士業」としてさまざまなメディアで活躍中。現在、保有資格・検定は約600を超え、僧侶の資格も持つ。『資格が教えてくれたこと 400の資格をもつ社労士がみつけた学び方・活かし方・選び方』(日本法令)、『行政書士・社労士・中小企業診断士 副業開業カタログ』(中央経済社)、『かけ合わせとつながりで稼ぐ 資格のかけ算大全』(実務教育出版)など著書も多数。

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