Windows 11 Ver.22H2において、BluetoothのLE Audioがサポートされたが、当時は対応するデバイスが少なく、気軽に試すことができなかった。昨年ぐらいからLE Audioの対応機器も増え始め、安価な製品が見られるようになった。今回はこのLE Audioヘッドホンを試してみた。
そもそもBluetoothとは? 最新バージョンは6.1
携帯電話用の無線デバイス接続(当時の主目的は、有線ケーブルを無線に置き換えること)としてBluetoothが発表されたのは1998年で、すでに27年が経過している。
当初は「Bluetoothとは?」といった記事が多かったが、これだけ普及すると当たり前の存在として扱われるようになり、詳細な内容は逆にわかりづらくなってきた。そこで、あらためて簡単にBluetoothとLE Audioの解説をすることにする。
Bluetoothにはバージョン番号がある。
これは、仕様を定めるドキュメント(Bluetooth Core)のバージョン番号であり、最新版はVer.6.1で今年5月に制定されている。新しいドキュメント(バージョン)が出たからといって、従来の仕様がすぐに廃止にはならない。
また、基本的に互換性が保たれているため、新バージョンになったからといって、急に以前の機器が使えなくなるわけではないし、逆に新しいバージョンに対応したスマートフォンにおいても、従来の対応機器が利用できる。Coreドキュメントの構成として、Ver.4.xのドキュメントには、Classicの定義が含まれていないが、Bluetooth Core Ver.3.xを使う。
現在のBluetoothには、大きく「Classic」と「LE(Low Energy)」の2つの通信方式があり、実際のところはそれぞれの間には互換性がない。ただし、スマートフォンなどに組み込まれるBluetoothコントローラーには、ClassicとLEの両方の通信モジュールが組み込まれていて、普通はどちらの通信方式に対応しているのかを意識する必要はないようになっている。
Bluetoothのオーディオ技術
Bluetoothの当初の目的の1つは、ヘッドセット(Headset Profile:HSP、モノラル)やハンズフリーデバイス(Hands Free Profile:HFP、モノラル)の無線接続だった。その後、A2DP(Advanced Audio Distribution Profile)でステレオヘッドホンが使えるようになった。HSP/HFPとA2DPを合わせてClassic Audioと呼ぶ。
Classic Audioは、現状すべてのBluetoothホスト機器(スマートフォンやPCなど)と接続が可能だ。ただし、通信方式がClassicであるため、後述するLE Audioと比較して消費電力が大きいという弱点がある。また、特定の機器(ヘッドセットやステレオヘッドホン)を想定して無線化しているため、これ以上機能を拡張することが難しく、将来的な利用において課題が残る。
LE Audioは、名前のとおりにLE通信方式を使うオーディオ技術だ。Classic Audioと互換性はないが、ゼロから設計され、Classic Audioにはないいくつかの特徴を持つ。なお、デバイスにLE Audioが搭載されているかどうかは、Bluetoothバージョンからは判断できず、メーカーの製品表示のみが頼りである。
たとえば、Bluetooth Ver.5.4に対応したヘッドホンであっても、LE Audioに対応しているものと、そうでないものがある。なお、LE Audioの定義は、Bluetooth Core Ver.5.2でなされている。
LE Audioは以下のような特徴を持つ。
マルチストリーム伝送
LC3コーデック
ブロードキャスト(AuraCast)
補聴器などの音声を扱うデバイスにも対応
低消費電力
「マルチストリーム伝送」は、複数のLE Audioデバイスとストリーム接続をする機能だ。現在のClassic Audioにおいて、いわゆる完全ワイヤレスイヤホンは、左右の間を独自方式(あるいはWi-Fiのような既存技術)で接続し、Bluetoothホスト側から1つのA2DPデバイスのように見せている。
マルチストリーム伝送では、左右とスマートフォン(Bluetooth LE Audioホスト)を2つのストリームで接続する。このため、補聴器のようなデバイスの接続も可能になる。また、左右間の接続がBluetooth LEになるために低消費電力化も期待できる。
「LC3コーデック」は、LE Audio用に開発されたコーデックで、Classic AudioのSBC(Subband Codec)よりも高音質で、マルチストリーム伝送時にチャンネル単独でエンコードしても高い圧縮率を実現できる。また、処理負荷も小さく、遅延を小さくできるという特徴もある。
ブロードキャストはAuraCastと呼ばれ、特定の場所で、アナウンスやBGM、同時通訳音声などを流すために利用するものだ。ペアリング不要で、ユーザーが指定したサウンドリソースを選択して聞くことができる。補聴器では周囲の雑音を除去しにくい駅のホームなどで、案内アナウンスなどを直接LE Audioデバイスで聞くことができる。

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