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第12回 SORACOM対応 特選デバイス&ソリューションカタログ

Raspberry Piを活用し、様々なBtoB向けデバイスを開発するメカトラックス

IoTビジネスのポイントは「在庫リスクを抑えつつ、実証から量産への道筋を作ること」

インタビュー 大谷イビサ 編集●MOVIEW 清水

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ソラコムパートナープログラム初期から参画しているメカトラックス

 メカトラックスは、ソラコムのパートナープログラムに当初から参画した企業である。IoTプラットフォームを提供するソラコムと協業関係を構築し、IoTシステムの実装現場における通信・運用基盤を支える体制を強化している。自社製品におけるセルラー通信機能の実装では、長年ソラコムのIoT通信サービスを多く採用してきた。

 また、クラウド連携においてはBeamやHarvestといったデータ転送・収集サービスを活用し、デバイス側の開発に留まらず、クラウドと接続したIoTシステム全体の構築を支援している。

 三好氏はソラコムとの協業のメリットとして、次の点を挙げている。

1:通信だけでなくIoTシステム全体を支えるサービス群が充実
ソラコムはIoT通信のみならず、データ収集、暗号化転送、管理、可視化などの周辺機能を提供しており、IoT開発の立ち上げ工数削減に貢献している。

2:PoCから商用運用までを一貫して構築可能
ソラコムのサービス群により、小規模な実証実験から本番運用への移行が容易であり、メカトラックスの「プロトタイプをプロダクトに」という開発方針と親和性が高い。

3:クラウド領域の課題を補完
メカトラックスはデバイス開発を強みとする一方でクラウド側の開発を専門としないため、ソラコムのクラウド接続サービスを活用することでシステム提案の幅を拡大している。

4:提案スピードと開発スピードの向上
ソラコムのプラットフォームを前提に組み込むことで、通信設計とクラウド連携の検証を迅速に進められ、顧客企業への導入提案スピードが向上している。

 メカトラックスが手掛けた事例においても、データ送信の手段としてBeamが多く採用されている。これにより、セキュアなデータ送信が確保され、IoTシステムの運用性が向上している。

 それでは実際にソラコムとの連携によるIoT導入事例をいくつか紹介しよう。

●ケース1:シスメット 防災IoT ― 建設・伐採現場向け環境監視システム
 気象予測・気象関連計測機器メーカーでもある民間気象会社シスメットは、同社が展開する自然災害防災システム「ZEROSAI」にメカトラックスのデバイスを採用している。同システムは、建設現場や伐採現場など災害リスクの高い環境で気象データや環境データを収集し、現場にフィードバックする危機管理システムだ。

 ZEROSAIでは2つの通信・制御機器(気象IoTセンサーと、赤色回転灯・電光掲示板で構成する警報装置)にラズパイとセルラー通信モジュールを採用し、メカトラックスがハードウェアおよび組み込みソフトウェアを開発した。また、屋外利用を前提に、防水設計・安定給電・遠隔監視の仕組みを導入している。

●ケース2:RYODEN 害虫モニタリングIoT「Pescle Insects」― 捕虫器の遠隔監視・捕虫数カウント
 RYODENが展開する害虫モニタリングIoTソリューション「Pescle Insects」に、メカトラックスの拡張通信基板「4GPi」「slee-Pi」のノウハウを活かしたカメラユニットが採用されている。同ソリューションは主に食品工場に設置されている「捕虫器」の映像、および捕虫数を可視化し、リアルタイムでの異常検知と早期対策を可能にするシステムである。

 既存製品のラズパイ、slee-Pi、および4GPiを活用してPoCを重ねて、そのノウハウを活用して専用基板にすることにより早期に量産移行を可能にした。現在は市場で約200台以上稼働しており、来年度には数千台規模への成長を見込んでいる。ラズパイとメカトラックス製品の活用によりPoCから量産まで短期間で立ち上げた事例だ。

●ケース3:宇根鉄工所 防水板監視IoT ― 「アクアシャッターf」の稼働監視
 宇根鉄工所は、浮力起伏式防水板「アクアシャッターf」の状態監視システムにおいてメカトラックスと協業している。

 アクアシャッターfのIoTデバイスへの要件は過酷で、水没環境での動作、乾電池で稼働、設置スペースなどの制約があり、本プロジェクトでは消費電力が大きなラズベリーパイを使用せず、低消費電力の通信規格であるLTE-Mモジュールを搭載した専用マイコン基板を開発している。

 メカトラックスは通信・電源・計測の3領域を補完する基板製品を軸に、IoTソリューションの社会実装を推進しているが、これらの事例は、ラズパイ等を用いた小型・低コスト・短期開発のIoTシステムが、実際の産業現場で本番運用に至っていることを示している。メカトラックスは、IoTデバイス開発製造を得意とし、ソラコムはIoT向け通信・クラウド接続の基盤を提供する。両社の連携は、デバイスからクラウドまでを統合した実用的なIoTソリューションの実現を加速しているといえるだろう。

メカトラックスの顧客層や市場動向、そして今後の展望は?

 メカトラックスへの問い合わせは特定の業種に偏らず、中小企業から大手企業まで幅広い。特に「スタートアップ」「大手メーカー新規事業部」「製造・設備・インフラ企業」からの需要が増加している。

 スタートアップからはIoT製品の立ち上げ相談、小ロット生産への対応、大手メーカー新規事業部からはPoC後の量産展開を視野に入れた採用が多いとのこと。また、製造・設備・インフラ企業は現場改善用途や監視用IoT導入に需要がある。

 IoTプロジェクトではまずデータを取得し価値を検証するフェーズを重視する傾向がある。メカトラックスが最低注文数を設けず1台から対応するのは、こうした背景を踏まえてのことだ。

 そして今後は、デバイス単体の提供に留まらず、ソラコムとの協業による“つながるIoT”の実装強化を進めているとのこと。今後はこれまでのハードウェア支援に加え、「小さく作り、実現性を検証し、スケールさせるIoT開発モデル」を産業市場に展開していきたいと三好氏は語った。

「ラズパイをベースとしてエッジデバイスから上流まで幅広く知見を持つ開発パートナーとして見ていただきたい」と、デバイスの提供だけでなく、開発パートナーとしてクライアントを支えていきたいという三好氏

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