第12回 SORACOM対応 特選デバイス&ソリューションカタログ
Raspberry Piを活用し、様々なBtoB向けデバイスを開発するメカトラックス
IoTビジネスのポイントは「在庫リスクを抑えつつ、実証から量産への道筋を作ること」
Raspberry Pi(以下ラズパイ)を使用したハードウェアはかなり多いが、IoT、それも業務向け用途として耐えられる品質を持つ製品となるととても数が少なくなる。そのラズパイの活用を支援する基盤製品を提供し、産業向けにも耐えうる製品を提供しているのがメカトラックスだ。
今回はメカトラックス 技術営業担当 三好亮平氏に、提供している製品や、その活用事例などを掘り下げ、メカトラックスが掲げる「プロトタイプをプロダクトに」の実例やソラコムとの連携などについてお話しを伺った。
最低発注数量を設けず、小ロットの製造支援をするメカトラックス
メカトラックスは福岡に本社をおき、ラズパイを中心としたBtoB向けIoTデバイスの開発・製造を手がけるハードウェア企業だ。創業は2005年で、当時はエンターテインメント向けのロボット関連事業を展開していたが、2014年にラズパイ専用に開発された3G通信モジュール「3GPi」を発売、ラズパイ関連ビジネスへ本格参入した。
現在は、産業用途向けの通信モジュール基板や電源管理基板、アナログ入力基板など、ラズパイの活用を支援する基盤製品を展開し、IoT事業者のハードウェアパートナーとして評価を高めている。メカトラックスの特徴は、BtoB向けハードウェアに特化している点に加え、「プロトタイプをプロダクトに」を掲げ、PoCから量産ステージへの移行を見据えた支援を提供し、最低発注数量(MOQ)を設けず「1台から対応可能」ということだ。
IoTデバイスは製品化の妥当性や費用対効果が読みにくく、企業側が大規模発注に踏み切れないケースが多く、小ロットの製造支援をしているメカトラックスはそれら企業からの支持も厚い。
メカトラックスが考えるラズパイの利点とは?
その製品の中心となっているのがラズパイだが、2023年度にメカトラックスは日本企業として初めてRaspberry Pi本社(英国)より公式の「Design Partner(デザインパートナー)」として認定されており、メカトラックスの技術力と開発実績が公式に評価された形となっている。
三好氏によると、ラズパイが産業界で支持を得ている背景には4つの理由があるという。
1:情報が豊富で学習・導入がしやすい
情報が豊富でアクセスしやすく、開発の敷居を大幅に下げる存在である。
2:周辺機器が豊富で、手早くPoCを進められる
少ない工程で試作を立ち上げられ、機能検証から実証実験フェーズへ進みやすい。
3:組み込み専用ラズパイの存在
通常のラズパイに加え、産業用途向けに展開されている製品(Raspberry Pi Compute Module)があり、大量生産や高信頼性を求めるユーザーのニーズに応えられる。PoCで使用した通常のラズパイのOS・ソフト資産をそのまま活かしつつ容易に移行が可能である。
4:プロジェクト全体でのコストパフォーマンスが優れている
「安いだけ」ではない、設計開発コストとその後の量産性の両立に優れる点が評価されている。
また、参入障壁の低さ、誰でも始めやすいという強みがあると語る。「メカトラックスへの問い合わせは「ラズパイで何か作れないか」「ラズパイなら素早くプロトタイプが作れそうだ」といった理由で興味を持たれる方も多いです」(三好氏)。
一方で「ラズパイ=安い」というイメージだけが先行していることも多い。「本来ラズパイの価値は価格だけではなく、トータルの開発効率、スピード感、PoCから量産までの移行のしやすさにある。それらをベースとして、エッジデバイスから上流まで幅広く知見を持つ開発パートナーとして弊社を認識していただきたいです」(三好氏)
メカトラックスの拡張基板群は、ラズパイの手軽さを維持しながら、産業用途に求められる信頼性を加える設計思想となっており、IoTデバイスの「試作ツール」から「実運用可能な産業用エッジデバイス」へとラズパイを拡張させる役割を担う製品である。
産業用途での実用性を念頭に設計されたメカトラックスの製品
メカトラックスは、ラズパイを産業用途で活用するための拡張基板を中核製品として展開している。その製品ラインナップは主に「通信」「電源制御・死活監視」「アナログ入力」の3系統で構成され、いずれも現場導入を前提とした安定性と拡張性を備えている。
第1の製品系統は、携帯通信モジュールを搭載した「4GPi」シリーズだ。4G(LTE)通信モジュールを採用し、ラズパイにスタックして使用できる構造となっている。ユーティリティソフトや接続コマンドはGitHubで公開されており、導入ハードルの低さを重視した設計となっている。同製品は2014年発売の「3GPi」から改良を重ねており、国内のIoT実証実験や遠隔監視システム等での豊富な採用実績を持つ。
第2の系統は、電源の制御・安定化と死活監視機能を備えた「slee-Pi」シリーズ。ラズパイは電源周りが弱いとされるが、同製品経由でラズパイのへ安定した電力を供給することで運用信頼性を高めている。また、ハングアップ検出時の電源再投入機能、DC6-24V電源対応、簡易的なUPSにも使用できる2系統の電源入力、RTC(リアルタイムクロック)搭載など、産業現場で求められる機能に対応している。
第3の系統は、アナログ信号を扱うための「ADPi」シリーズ。ラズパイは標準仕様でアナログ入力を備えていないが、同製品は24ビットのデルタ・シグマ(ΔΣ)型A/Dコンバーターを搭載し、高精度のアナログデータ取得を可能にしている。温度や電圧などの工業計測用途や、製造ライン診断などの領域で利用されている。
加えて、同社は周辺筐体や運用キットも提供している。「Pi-protect」はAC電源やノイズフィルター、バックアップ電源(キャパシタ)を備えた耐環境型のIoTゲートウェイであり、工場や屋外観測装置での運用を想定したものとなっている。また「メタルケース」はPoC用途に限らず、屋内や安定した環境での利用に適した軽量ケースであり、小規模なIoT実験環境を短期間で構築する需要に応えている。その他、太陽光パネル等電源一体型の屋外稼働キット「Pi-field」も製品化し、それぞれ豊富な稼働実績を有している。
これらの製品はすべて産業用途での実用性を念頭に設計されており、ラズパイの弱点とされる電源安定性や長期運用性を補完しつつ、迅速な開発と量産機器への組み込みも可能としている。
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