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第14回 SORACOM対応 特選デバイス&ソリューションカタログ

CPU開発などのノウハウを活かし、IoTからAIエッジまでを担うVIAの総合力に迫る

インタビュー 大谷イビサ 編集●MOVIEW 清水

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ソラコムとの協業で実現する、クライアントに最適な構成の提案

 VIA Technologies Japanはハードウェアメーカーとしては珍しく標準品の小ロットからの販売にも対応しており、試験導入やPoC段階の企業にも門戸を開いている点が特徴だ。商品は台湾本社の製品を中心に、日本市場向けの販売サポートおよびODM支援を担っている。ODM/OEM案件については、数量やプロジェクト規模に応じて、仕様設計・ファームウェア調整・量産体制の構築までを包括的にサポートしている。コスト最適化を図るには、ある程度の台数が必要だが、まず試してみたいというニーズにも柔軟に対応している点は評価が高い。

 そのため、VIA Technologies Japanのビジネス領域は、従来のIoT機器販売からAIエッジデバイスを軸としたソリューション提案型モデルへと進化している。クラウドとローカルAIの分散処理が求められる時代に対応し、ハードウェア提供にとどまらず、通信・API・AIモデルの統合設計を視野に入れた取り組みを進めている。

 特にソラコムやAWSとの連携により、エッジ側でデータを処理し、クラウド側で集約・解析するハイブリッド構成のIoTプラットフォームを実現している。「クラウドとエッジを連携させて、エッジ側でAI推論を実行し、結果やメタデータをクラウドに集約、さらにその分析結果をエッジにフィードバックして分散処理するという、双方向のハイブリッド構成が理想だと考えています」(小間氏)。このとき、通信インフラとの連携やダッシュボードなどによる可視化は不可欠であり、ソラコムのような通信プラットフォームとの協業は非常に重要になってくる。

すぐに使えていち早く量産化体制に入れるAIエッジを軸としたソリューション提案

 わかりやすい例としてVIA Technologies Japanが開発したタクシードライバー用のAndroid配車端末がある。最初は民生用タブレットを使われていたが、2016~2017年当時のAndroid 4世代の機種では、夏場にバッテリーが膨張して使えなくなるなどのトラブルが頻発したという。そこでVIA Technologies Japanでは車載専用のセパレート構造の端末を製作した。リアルタイムで位置情報を送信する必要があるため、SIM通信を前提としたサービス構成になっており、タクシーの位置情報マップを実現。通信+Android+低消費電力設計の組み合わせが活かされた代表的な事例だ。

 ソラコムの「Harvest」や「Beam」などのAPI連携サービスを利用することで、メタデータ通信やセンサー情報の収集・可視化が容易に行え、ハードウェア上で得られたAI推論結果や動画データを、クラウドに安全に転送・蓄積・再利用する仕組みによって、クラウドとの親和性を前提としたIoTアーキテクチャが実現されている。

 そのソラコムとはフラットな協業関係を築いており、VIA Technologies JapanのAIoTデバイスやエッジAIボードの多くは、ソラコムの通信サービスと相互認証を取得済みであり、認定デバイスとして正式に登録されている。両社の関係は、単なる通信SIMの提供・利用にとどまらず、ハードウェア・通信・クラウドの三層を統合する協業モデルへと発展している。VIA Technologies Japanはデバイスおよびミドルウェアを、ソラコム側は通信回線とクラウド接続基盤を提供し、エッジからクラウドまで一貫したデータ処理を実現している。

 「クライアントには通信まわりのノウハウを持っていない企業も多く、クラウドやAPI連携まで含めた開発リソースを確保できないケースもあります。その時、ソラコムのサービスを活用するのが最もスムーズです。既に認定も取得済みですし、同じ検証環境の中で完結できるので、安心感があります」(小間氏)

VIA Technologies JapanのAIエッジ向け製品ラインナップ

 VIA Technologies Japanとソラコムとの協業は大きな戦略的意義を持っている。クライアントにはクラウドやネットワーク運用のノウハウを十分に持たない企業も多く存在するため、ソラコムの通信・API基盤を組み合わせることで、クラウドやサーバー構築の専門知識がなくてもIoTソリューションを実現できるというのが利点だ。

 また、ソラコムのMVNOとしての柔軟性と、認定デバイスの信頼性が組み合わさることで、「通信品質の担保された安全なIoTプラットフォーム」を顧客に提供できる。クラウド知見を持たない企業にはソラコムを推奨し、クラウド開発力を持つ企業にはAWSや他の通信事業者を提案するなど、ケースバイケースで最適な構成を提案している。

 AI開発においても、最初から本格構築できる企業は少なく、エンジニアの“片手間プロジェクト”のような形で始まることが多い。その時に既存SDKやテンプレートを組み合わせて使える環境があることは非常に有用だ。小間氏が「私たちもソラコムも、お客様の初期導入を支援できる強みがあると感じています」というように、ソラコムとの連携により、通信・データ・AIを統合した総合IoTソリューションプロバイダーとしてのポジションを形作っていける。

今後のテーマは、これまで蓄積した情報資産をどう活かしていくか

 VIA Technologies Japanは今後の展望として、AIがローカルでもクラウドでも主流になっていくと考えており、これまでのIoTでの「データ収集フェーズ」は一段落し、これからは蓄積された情報資産をどう活かすかがテーマだという。

 現在の案件の多くは「AI×カメラによる効率化」で、AIはあくまで手段であり、業務効率を高めるためのソリューション要素と捉えている。AI処理も、すべてをクラウドで行うわけではなく、IoTの時代と同様に、通信環境や回線品質が常に安定しているとは限らないため、ローカル側でAI処理を行うニーズが増えることが見込まれる。そうしたときにソラコムとの協業を通し、AI時代に最適化されたハードウェア設計思想を展開することで、産業IoT・エッジAI市場を担う存在を目指していく。

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