このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

初の建設業界向けユースケース、NTTと安藤ハザマがIOWN Global Forumで一般公開

1000km離れたオフィスからトンネル建設の施工管理を IOWNのユースケース公開

2025年08月12日 13時45分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

今回のユースケースでは、IOWNを通じたIT/データ活用により、施工管理の省力化と効率化、さらにトンネル施工の遠隔化などを目指している

敷設した光ファイバーを“センサー化”、竣工後の安全点検も常時実行可能に

 3つめが「モバイル検査(遠隔臨場)」だ。近年の建設現場では、検査の一部をリモートから遠隔臨場で実施しているケースがある。ただし、現在のネットワーク技術では、伝送できる映像の解像度が低かったり、映像と音声にずれが生じたりするため、遠隔臨場で検査漏れや指摘漏れが発生する懸念があるという。

 このユースケースでは、取り回しが容易な高精細カメラとIOWN APNを組み合わせて、遠隔地にいる検査者の着目点を正確に捉えるピンポイント検査を実現する。検査者が目視したい地山の亀裂、湧水といった箇所を、高い解像度の映像で確認できるほか、指示タイミングの遅延も解消されて、正確な判断ができるようになる。船津氏は「検査の正確さの向上とともに、生産性向上にも大きく貢献できる」とする。

 最後が「通信ファイバーを活用した維持管理(モニタリング)」である。トンネルの竣工後、実際に車や人の通行が始まったあとも、安全点検は定期的に実施されている。ただし、定期点検の合間に発生した異常の発見は難しいのが実態であり、この課題解決にIOWN APNを活用する。「定期点検の時点になってから異常が発見されて、緊急措置が必要になる場合がある。トンネル利用者への影響や点検者の負担を増やさず、早期に発見できるモニタリング体制が必要だ」(船津氏)。

 具体的には、施工時に敷設した光ファイバーのデータをセンシングに転用し、任意の箇所のひずみや剥離、変形などを検知するほか、加速度計測で経年劣化の影響を遠隔から常時観測できるシステムを構築する。

IOWN Global Forumで一般公開、幅広いパートナーに実証参加を呼びかけ

 今回のドキュメントは、建設業界初のユースケースを盛り込んだドキュメントとして、IOWN Global ForumのWebサイトで公開されている。IOWN Global Forumは、IOWNの実現や普及を目的とした非営利団体だ。

 NTT IOWNプロダクトデザインセンタ 戦略デザインプロジェクト 主任研究員の伊藤伸樹氏は、IOWN Global Forumには現在、アジアや欧米を含む168組織/団体が参画しており、技術仕様やリファレンスアーキテクチャ、業界ごとのユースケース検討などに取り組んでいると説明する。今回のドキュメントは、「建設業界における具体的なユースケースを示し、その実現に必要な技術要件や満たすべき評価基準を整理し、提示する文書になっている」と位置づけた。

 今後の実証実験については、現時点では「詳細を検討中」としている。船津氏は、NTTと安藤ハザマだけでなく、IOWN Global Forum参画企業や、それ以外のゼネコン、ネットワーク、デバイス、AIソリューションなど、幅広い技術と知見を持つ企業にも参加を呼びかけたいとした。

 「トンネル建設工事および供用時に、安全性と生産性向上を同時に実現するIOWNソリューションを創出するとともに、国内外のトンネル工事現場で活用が可能な次世代ICT基盤の構築を目指したい」(船津氏)

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所