ダイエット迷子から脱却して起業。経験と知識を武器に多くの女性を支えるダイエットコーチに

文●杉山幸恵

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 栄養士・調理師としての専門知識を生かして、現在までに800人以上をサポートしているダイエットコーチの吉田理江さん。その原点となったのは、絶食や下剤服用など無理を重ねたことで心身に不調をきたしたという自らのダイエットの遍歴。「このままではダメだ!」と食生活を根本から見直し、自分の体で実践しながら〝食べてきれいになる〟ダイエットメソッドを確立する。それは栄養学・調理の専門学校での学びにはじまり、飲食店勤務や料理家のアシスタントなどのキャリアと、自身の経験すべてを昇華させたものだった。

「株式会社リエット」代表取締役社長、ダイエットコーチの吉田理江さん。食べながら無理せず痩せるダイエットを自ら実践し、162㎝48㎏をキープしている

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〝食べないダイエット〟で苦しんだ経験から独自のメソッドを確立して起業

 1982年生まれの吉田理江さんは、22歳の時に福島県から上京。ライフシフトをはかるため、24歳で栄養学と調理の両方を学べる「服部栄養専門学校」への入学を決意する。まず1年間、調理師科で基礎を学び、その後、さらに栄養士科で2年間学んだ。

 「幼いころから食べることが大好きで、〝食〟に関わる仕事に自然と興味を抱いていたんです。また、高校時代に身長162㎝に対して体重が60kgまで増え、ダイエットに苦しんだ経験から、〝食と健康〟の関係にも強く関心を持っていました」

 食の基礎から応用までを幅広く学べる環境は吉田さんにとって魅力的で、調理師と栄養士、両方の資格が取れるのも将来を見据えた理想的な道だったという。

 「このころ、学校に通いながらもうひとつの情熱でもある演劇活動も続けており、舞台で芝居をするほか、日本舞踊を習うなど、表現の世界にも積極的に取り組んでいました。この経験は、現在ダイエットコーチとして人前で話す際にも大きく活かされています」

 専門学校卒業後は舞台の仕事を挟みながら、和食レストランとカフェで調理スタッフとして勤務。特に和食レストランでは、主に仕込みや盛り付けを担当し、現場で和食の基本を身に付けることができた。

 「この仕事を選んだのは、学校で学んだ調理技術を実践で深めたいと思ったからです。また、上京したばかりだったこともあり、大都会ならではの多様な食文化に触れられることも魅力でした。当時はまだ自分のキャリアの方向性を模索していた時期でもあり、さまざまな現場で経験を積むことが大切だと考えていました」

25歳ごろの吉田さん。体重は58 kgほどあり、いろいろなダイエットを試しては失敗するというのを繰り返していたそう

 そんな生活を5年ほど続けていたある日、たまたま料理研究家・みきママさんのアシスタント募集のブログ記事に目が留まる。「みきママさんのように、おいしいレシピを考案し、いつかメディアで活躍する仕事がしたい!」。そんな思いから応募した吉田さんは、見事、アシスタントして採用された。

 「アシスタントとしては、レシピの試作や撮影のお手伝いを担当。〝おいしさと健康を両立させる料理〟という考え方を、肌で感じながら学べる貴重な経験ができました。また、料理をどのようにメディアで見せていくか、情報発信の方法も知ることができ、後に独立するうえで大きな糧になったと思います」

 1年ほどアシスタントとして働いた吉田さんは34歳の時に独立し、レシピ開発や料理教室の開催を中心に活動。そんななか、友人や知人からのリクエストで、以前行っていた少人数制のダイエットサポートを再開することに。これが現在につながるダイエットコーチとしてのスタートだった。その背景には、吉田さん自身が10代から30代にかけて、数えきれないほどのダイエットに挑戦しては失敗を繰り返してきた経験があったからだという。

 「体型を揶揄する心ない言葉を浴びたこともあり、20代後半には極端な食事制限で46kgまで減量したものの、摂食障害に近い状態になり…。下剤の乱用や体調不良などで心身ともにボロボロに。30代になるころには〝食べないダイエット〟のツケが回って自律神経を崩してしまったんです。『このままでは本当に健康を失ってしまう』と危機感を抱き、そこから自分の食生活を根本から見直すことにしました」

独立後、料理教室を開催していた時の様子。笑顔の裏では心身の不調に悩まされることもあったという

 栄養士としての知識、調理師としての経験、そして万年ダイエッターとしての失敗の数々をフル活用。自らの体で試しながら、独自のダイエット方法論を構築することに。さらにセミナーへの参加や専門書での研究も重ね、日本人の食事摂取基準をベースに、〝食べてきれいになる〟メソッドを確立した。

 「このメソッドを自分に適用したところ、制限なく食べながらも体重48〜49kgをキープできるようになり、心の状態も安定。私自身が救われたこの方法を、もっと多くの人に伝えたいという想いから、ネットでの情報発信と集客をスタートさせました」

 SNSでの発信を本格的に始め、ネット集客に力を入れるようになると、オンラインでのサポートが評判を呼び、クライアント数も右肩上がりに。「食べながら痩せる」「リバウンドしない体質づくり」といった成果が積み重なるなかで、事業としての可能性を感じるようになったという。

 こうして、より信頼性のある形でこの活動を広げていくため、2024年4月に「株式会社リエット」を設立。法人化を機に、外注先との連携も強化し、より多くの方にサービスを届ける体制を強化。自身のメソッドを伝えられる人材の育成にも力を入れることに。

 「起業を決意したのは、『苦しんでいる女性をもっと多く救いたい』という強い思いがあったからです。私のように、無理なダイエットや過度な食事制限で苦しんでいる女性は少なくありません。その問題を根本から解決するには、経験者でもある私自身が事業を展開していく必要があると感じました。

 そして、『食べることに罪悪感を持たず、自分を好きになれる女性を増やしたい』というミッションを実現するには、誰かの下で働くのではなく、自分の理念を真っすぐに貫ける場所をつくることが欠かせませんでした」

 起業するにあたって、ビジネスに関する知識がまったくなかったという吉田さんは、マーケティングやセールスについて学ぶことから始める。いくつものセミナーに参加し、オンラインビジネスの仕組みや、SNSを活用した情報発信の方法、オンラインでのサポートシステムの構築方法など、幅広く勉強を重ねた。

 「特に力を入れたのがライティングスキルの向上。自分のメソッドやサービスの価値を正しく、そして魅力的に伝えるには、明確で説得力のある文章力が必要だと感じたからです。また、メソッドの信頼性を高めるため、栄養学の知識を常にアップデートし続けることは欠かせません。定期的に専門書を読んだり、セミナーに参加したりと、科学的根拠に基づいた指導ができるよう日々努力を続けています」

学びと気づきを重ねて大きく成長。今後は認定ダイエットコーチを全国に増やしたい!

 現在、「株式会社リエット」でのメイン事業は、〝食べながら痩せる〟ことを最大の特徴としたリエットダイエットサポートコース」。食事の記録チェックやアドバイス、オンラインでの面談、栄養学・ダイエット関連の動画講座提供に加え、メンタル面のサポートも行う。

 「摂食障害や自律神経の不調など、極端なダイエットがもたらす弊害を経験した私だからこそ提供できる、健康的で持続可能なダイエットアプローチが好評です。 3食ちゃんと炭水化物をとりながら、お酒やお菓子も適量であれば楽しめる食生活をベースに、平均5kgの減量を実現しています」

ダイエットサポートで成果をあげた受講生との対談の様子

 ほかにもダイエットコーチとして独立したい人をサポートする「リエットダイエットプロコーチ育成アカデミー」や、ビジネスコンサルティング、コラム執筆など、その活動は多岐にわたる。友人・知人へのダイエットサポートから会社設立と、順調にステップアップをしてきたようにみえるが、ここにいたるまでは苦労することも多かったとか。

 「やはり〝食べながら痩せる〟というメッセージを浸透させるのが大変でした。世の中にはまだ〝ダイエット=我慢・制限〟という固定概念が強く、『本当に痩せるの?』と怪しまれることも…」

 加えてオンラインでのサポート体制を整えることにも苦労したという。対面で直接見てアドバイスできない中で、どうしたらクライアントに寄り添い、効果的なサポートをするのか模索する日々だった。

 「事業が軌道にのるようになったのは、本格的にネット集客を始めて2年後くらいから。複数のクライアントさんが『3ヶ月で5kg減量』『お菓子も食べて痩せた』という自身の成果をSNSで発信してくださるようになり。同じような悩みを持つ30〜40代女性を中心に反響が広がり、一気に申込が増えました」

 その背景にはコロナ禍による生活様式の変化もあったと、吉田さんは振り返る。在宅時間が増えたことで食生活に悩む人が増え、同時に自宅で安心して受けられるサポートへのニーズが高まったことで事業が加速したという。そして、もう一つ、成長の鍵として大きな転換となったのは、〝適正な価値に見合った価格設定の重要性〟への気づきだろう。

 「事業構築の過程で最も大きな失敗は、起業初期にサービス価格を低く抑えすぎたことでした。自分の価値に自信が持てず、『高くすると申し込んでもらえないのでは』と不安になり、労力に見合わない価格設定に…。結果的に自分の時間と労力が追いつかなくなり、一時は体調を崩すほど疲弊していました」

 この経験から、適正な価値に見合った価格設定の重要性がいかに大切かを学んだという吉田さん。価格を見直したことでクライアントが減るどころか、むしろサービスの質や成果が向上し、利用者の満足度も高まった。

 「また、初めのころは『私は誰にでも寄り添える』と思い込んでいましたが、実際には私のサポートが合わない方もいることに気づきました。今では事前カウンセリングを丁寧に行い、お互いにとってベストな選択ができるようにしています。こうした〝選ぶ勇気〟もまた、事業を続けていくうえでとても重要なことだと実感しました」

 そう語る吉田さんにとって事業において最も大切にしていることは、「クライアントの人生に真の変化をもたらすこと」だという。体重を減らすことだけを目的とするのではなく、食べることへの罪悪感から解放され、自分の体を大切にする習慣を身につけていく。そして最終的には、自分自身を好きになってもらうことを目指している。

 「〝科学的根拠に基づいたアドバイス〟と〝個別最適なサポート〟の両立も大切にしています。ダイエット業界には根拠のあいまいな情報も多いですが、栄養士としての専門知識を活かしながら、一人ひとりの体質や生活習慣に合わせて丁寧に提案。信頼関係を築きながら、体重のコントロールだけでなく、自己肯定感の問題など、心の深い部分とも向き合うことも。だからこそ、その人の背景や気持ちを理解し、寄り添うよう心掛けています」

受講者限定でセミナーを実施することも

 そんな吉田さんには、多くの女性からの「人生が変わった」という声が届くという。「ずっと自分を責めてきたけど、あなたのサポートのおかげで自分を好きになれた」「食べることが怖くなくなった」。それがなによりの喜びであり、この道を選んでよかったと思える瞬間だそう。

 「自分自身の苦しかった経験が誰かの支えになっていることも、大きな励みです。同じような悩みを抱える女性の希望になっていると感じると、これまでのすべてに意味があったと思えるようになりました。

 また、起業をしたことで、自分の理念に基づいて仕事ができる自由さや、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を手に入れられたのがよかったです。子育てとの両立も、自分のペースで無理なく続けられています。家族は起業を決めた時からずっと応援してくれていて、小学2年生の息子からは『ママはごはんの先生でかっこいい!』と言われました (笑)」

 ダイエット指導歴は10年になるが、会社としてはまだまだ発展途上で、ようやくスタートラインに立ったばかりと語る吉田さん。次なるステップに向けて、どんなことを目標としているのだろうか。

 「日本中に〝食べてきれいになる〟文化を広げることです。〝痩せるには食べない方がいい〟という考え方がいまだに根強く残るなかで、その常識を変えていきたい。具体的には、リエットダイエット認定コーチを全国に1,000人以上育成し、どこに住んでいてもサポートを受けられる環境を整えたいと。さらに、学校での栄養教育プログラムの開発や、企業の健康経営支援といった、より広い領域への取り組みも視野に入れています」

 さらには自分の知識や経験を詰め込んだ書籍の出版や、より多くの女性に届くメディアでの発信なども計画中だそう。「最終的には食べることに罪悪感を抱く女性をゼロにする。そんな社会的影響を与えられる存在になりたい」。大きな野望を胸に抱え、その実現に向けてまっすぐ前を向く吉田さん。最後にライフシフトをしたいと考えている女性に向け、自身の経験を踏まえてメッセージをもらった。

 「人生は一度きり。後悔するなら、やらなかった後悔より、やって失敗する後悔を選びましょう。私自身、安定した仕事を手放して、未知の世界に飛び込むのことへの不安は計り知れないものでした。でも、情熱を注げる分野、人の役に立てる分野であれば、思い切って踏み出す価値は必ずあります。

 いきなりすべてを変えようとしなくても大丈夫です。私もはじめは副業から始めて、少しずつ軸足を移していきました。小さく始めて、経験と自信を積み重ねていくことをおすすめします。そして、自分の経験や苦しみは、きっと誰かの助けになるはず。『私には何もない』と感じていても、あなただけの視点や体験は必ず価値があるのですから。ぜひ、それを活かせる道を探してみてください。

 最後に、年齢は関係ありません。私も30代で大きな転機を迎えましたが、むしろ経験を積んだからこそ伝えられること、できることがあります。『もう遅い』と思わずに、自分の情熱に正直になってみてください。きっと、新しい扉が開けるはずです』

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