PEをデータフローで動作させて高効率を実現
ちなみにそのPEがどうして効率的か? と言う説明はあった。下の画像は3×3の畳み込み演算の場合だが、まず隣接する4方向との間で演算の半分を行ない、次のサイクルで残り半分の演算ができる格好になる。
結果、3x3の畳み込みが2サイクルで実施できるわけだ。同じ仕組みで、より大きなサイズの畳み込み演算も高効率で実現可能というのが同社の説明である。
なお、メモリー回りで言えば、2次キャッシュを経由すると最大70倍の電力消費となるそうで、やはりDMAエンジンを経由してアクセスするのはそれなりにコスト増になるのは間違いない。
でありながらもあえてこんな構成にしたのは、例えばすべてのLRMをファブリックでつなぐような構成にすると、そのほうが複雑さが増し、回路規模が増え消費電力が増えるという判断だったのかもしれない。
後述するQB4の構成では、RESNET-50動作時の消費電力を1W未満に抑えたというあたり、性能と消費電力、複雑さに関してのバーターとしてこの構成になった、と考えるのが妥当なのかもしれない。
Chimera GPNPUはこのPEの数でQB1~QB16まで3つのラインナップが用意されている。すでにQB4構成に関しての試作チップは存在しており、ラスベガスで開催されるCES 2023に合わせて来年1月5日と1月6日にブースでデモを行なうとしている。
また同社は製品だけでなくIPライセンスの形での提供も考えているそうだ。この試作チップはM.2の2280サイズに収まっており、いわゆるエッジ向けAI推論プロセッサーと同じ感じになっている。
この製品版の方は2023年第1四半期中に準備が整うようで、仮にここから量産を始めると第2四半期あたりに最初の量産チップが出てくる格好だろうか。すでにSDKの提供はスタートしており、またLLVM C++コンパイラおよび命令セットシミュレーターも限定的にだが提供を開始しているようだ。
根本的なところで、ChimeraをChimeraたらしめている、Scalar ElementとMatrix Elementの謎のパイプライン構造の意味はわからないし、QA4構成で1GHz駆動では4TOPSというのは、性能として低くはないが高くもないという微妙なところである。
とはいえかなりおもしろいプロセッサーではあり、果たしてどこまでマーケットが取れるのか見守りたいところだ。

この連載の記事
-
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 - この連載の一覧へ


















