自動車向けAIチップの市場で成功
1000万個のチップの出荷を記録
自動運転向けAIプロセッサーの成果が、2018年のCESで発表されたv-MP6000UDXである。コンセプトは簡単で、自動運転に必要となるさまざまな処理のうち、純粋に画像処理が必要な部分は従来の機能で、認識や判断が必要な部分をAIで処理する仕組みである。
v-MP6000UDXのコンセプト。問題はvideantisのソリューションは画像をメインにしていることで、昨今のLADERやLiDARを組み合わせたSensor Fusionをどう取り扱うのかが見えないところ。このあたりは次世代製品送りになるのかもしれない
v-MP6000UDXのコアそのものは既存のv-MP4000HDXシリーズの延長にあり、最大256コアまでできるという、いわば力業である。
コアそのものはv-SP(v-2000SPの延長と思われる)と、v-MP(v-2000MPの拡張版)から構成されるという構図は同じであり、主な変更点はそのv-MPに畳み込みニューラルネットワーク向けのアクセラレーターを追加したことである。
問題はこの図に畳み込みニューラルネットワーク向けのアクセラレーターが記載されていないこと。Dual-issue VLIW/SIMDとあるあたり、おそらくVector exec unitの中にアクセラレーターが統合されている(Vector exec Unitを改造して8bit×64あるいは16bit×32の演算を可能にした)ものと思われる
8bitで64MAC/サイクルなので、仮に256コアでは16384MAC/サイクルとなる。CentaurのAVX-32768も真っ青な性能である(256コアだと131072bitを同時に処理できるからだ)。さすがにこれは理論上可能というだけで、実際はもっと少ない。後述の例では16コアあたりがリーズナブルな構成とみなされているようだ。
ソフトウェアについては、主要なネットワークのフレームワークをv-MP用に変更する、畳み込みニューラルネットワークのマッピング用ソフトがv-CNNDesignerとして提供され、これを利用して実行させることになる。
実際いくつかの例が示されているが、16コア程度のv-MP6000UDXで無理なく処理ができているとする。
もちろんこれでいきなりLevel 4の自動運転をしろというのは無理であるが、こちらはまだそもそもアルゴリズムが確立できていないし、必要ならさらにコア数を増やすことで演算性能は上げられるので、機能的に足りないわけではないだろう。
拠点をドイツに置いていることもあり、早くから自動車業界に食い込んでいたというアドバンテージもあって、2019年にはKI-FLEXという自動運転チップに採用され、今年2月15日には1000万個のチップの出荷を記録したというあたり、videantisはうまく顧客をつかんで自動車向けAIチップの市場で存在感を出している。
アーキテクチャー的にはそれほど凝ったものではないのだが、むしろそれが(ある意味保守的な自動車業界向けとして)功を奏しているのかもしれない。

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