Cydrome/Convexと来たので、今回のスーパーコンピューターの系譜は、やはり同時代に同じような市場を狙ったAlliant Computer Systemsの話をしよう。
同社は1982年、マサチューセッツ州のリトルトンという街で創業された。リトルトンはボストン中心部から西北西に25マイル(40Km)といったところ。
連載328回で触れたKSRが転居したウォルサムがボストン中心部から10マイル(16Km)程度なので、だいぶ郊外という感じではある。
ちなみに当初の社名はDataflow Systemsで、後にAlliant Computer Systemsに改称している。創立メンバーはRon Gruner、Craig Mundie、Rich McAndrewの3人で、いずれもData Generalからのスピンアウト組である。
CEOはRon Gruner氏が勤めたが、2番目に出てくるCraig Mundie氏は現Microsoft CEOである。
Ron Gruner氏のページには、当時の副会長の写真があるが、これを見るとCraig Mundie氏はソフトウェア、Rich McAndrew氏はハードウェアをそれぞれ担当したらしい。
さらに余談となるが、同社がDataflow Systemsから改称した理由は、同じマサチューセッツ州にDataflow Computer Systemsという会社が設立されたからのようだ。
こちらを設立したのは、Multicsの開発やDECのPDP-1の設計などで非常に有名なJack Dennis博士(現在はマサチューセッツ工科大学の教授)で、どう考えても分が悪かったのだろう。
ちなみにDataflow Computer Systems、NASAのスタートアップ企業支援プログラムや、米国特許などには出てくるのだが、それ以上の話が見当たらないあたりはビジネスとしてはうまく行かなかったらしい。
Alliantの狙ったターゲットはCydromeのCydra 5やConvexのC1/C2などとかなり被る領域、要するにお手頃価格で購入可能で、それなりの性能という市場である。
この当時、この市場は一般に“スーパーミニコン”と呼ばれていた。ミニコン(Mini-Computer)、というのはIBMなどが提供するメインフレームに比べて小型のシステムを指し、それにも関わらず性能が高いということで、頭にスーパーが付いた造語である。
下の画像は、1985年6月付けでAlliant Computer Systemsのカタログに掲載された性能比較チャートである。
絶対性能そのものはCRAY-1Sやベクトルユニット付きのIBM 3090にはおよばないが、価格性能比が高い(ハイエンド構成でも67万ドル程度)ことをアピールした。これは同社の分析だけでなく、一般にもそう認知されていた話だ。
下の画像はIEEE CG&Aの1987年7月号に掲載された“Supercomputing and Graphics in the Earth and Planetaty Science”という記事に示されたものだ。
同社のシステムはローエンドのFX/1で約10万ドル、ハイエンドのFX/8でも100万ドルを切る程度で、価格性能比で言えばCRAY X-MPといい勝負という分析がなされている。
このお安さが、競合製品する他のシステムを振り切って、1980年代後半におけるスーパーミニコン市場を獲得できた理由として良いと思う。
→次のページヘ続く (SMPマシン2つを無理やり合体させたような構造)

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